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しくみ解説2026年2月28日

識別係数とは — テスト問題の良し悪しを数値化する

テストの点数をつけたあと、「この問題は適切だったのか?」と振り返ったことはないでしょうか。 識別係数を使えば、各設問が受験者の実力を適切に反映しているかを数値で判断できます。 大学で一括採点を使用されているユーザーからのリクエストを受け、問題分析機能として実装しました。

識別係数とは

テストには「良い問題」と「そうでない問題」があります。 良い問題とは、実力のある生徒が高い点数を取り、 そうでない生徒は低い点数になる問題です。 つまり、受験者の実力差を適切に「識別」できている問題です。

逆に、全員が同じような点数を取る問題や、 実力のある生徒ほどかえって点数が低くなるような問題は、 受験者を識別できていません。

識別係数は、この「設問が受験者をどれだけ識別できているか」を-1から1の数値で表したものです。 値が大きいほど識別力が高く、0に近いと識別力がなく、 負の値は実力と逆の関係になっていることを示します。

大学での活用

識別係数は、大学の試験やテスト理論の分野で広く使われている指標です。 テストの品質を評価し、次回以降の出題を改善するための手がかりになります。 一括採点を大学の定期試験で活用されているユーザーから 「問題ごとの識別力を確認したい」というリクエストをいただき、 今回の機能として実装しました。

具体例で考える

ある理科のテストで、4つの設問(各10点満点)を6人の生徒に実施した結果を見てみましょう。

生徒問110点満点問210点満点問310点満点問410点満点合計40点満点
佐藤さん1095125
鈴木さん876324
田中さん655521
高橋さん544720
中村さん325919
渡辺さん1151017

この結果を設問ごとに見てみましょう。

問1:良い問題

合計点が高い生徒(佐藤さん25点、鈴木さん24点)ほど問1の得点も高く、 合計点が低い生徒(渡辺さん17点、中村さん19点)ほど問1の得点も低くなっています。 テスト全体の実力と設問の得点がきれいに対応しており、受験者を適切に識別できている良い問題です。 問2も同様の傾向を示しています。

問3:識別力のない問題

全員がほぼ同じ点数(4〜6点)を取っています。 合計点が高い佐藤さんも、低い渡辺さんも、同じ5点です。 この設問では実力差がまったく表れておらず、識別力がありません。 問題が簡単すぎた、あるいは得点に差がつきにくい出題だったと考えられます。

問4:逆転している問題

合計点が高い佐藤さんが1点しか取れず、 合計点が低い渡辺さんが10点を取っています。 テスト全体の実力と逆の関係になっており、 識別係数は負の値になります。

これは、出題に問題がある可能性を示しています。 たとえば、問題文が紛らわしく理解力のある生徒ほど深読みして間違えてしまう、 あるいは出題範囲外の知識が必要でテスト本来の実力と無関係な問題だった、 といったケースが考えられます。

問題分析の結果まとめ
設問傾向識別力
問1合計が高い生徒ほど高得点良好
問2合計が高い生徒ほど高得点良好
問3全員ほぼ同じ点数低い
問4合計が高い生徒ほど低得点要検討

なぜ「補正済み」なのか

識別係数の正式名称は補正済み項目合計相関(corrected item-total correlation)です。 各設問の得点と合計点の相関を取るのですが、 単純に合計点と比較するのではなく、その設問を除いた合計点と比較します。

なぜ「除く」のでしょうか。 合計点にはその設問自身の得点が含まれています。 たとえば問1が10点満点で、佐藤さんが10点を取ったとします。 合計25点のうち10点は問1の得点そのものです。 問1の得点と合計点を比較すると、「自分自身との相関」が混ざってしまい、 相関が実際より高く見えてしまいます。

そこで、問1の識別係数を計算するときは、 合計点から問1の得点を引いた「補正済み合計点」を使います。

$$T_i^{*} = T - x_i$$

$T$:合計点、$x_i$:設問 $i$ の得点、$T_i^{*}$:補正済み合計点

この補正済み合計点 $T_i^{*}$ と 設問の得点 $x_i$ のピアソン相関係数が、識別係数です。

$$r_i = \frac{\displaystyle\sum_{j=1}^{n}(x_{ij} - \bar{x}_i)(T_{ij}^{*} - \bar{T}_i^{*})}{\sqrt{\displaystyle\sum_{j=1}^{n}(x_{ij} - \bar{x}_i)^2} \cdot \sqrt{\displaystyle\sum_{j=1}^{n}(T_{ij}^{*} - \bar{T}_i^{*})^2}}$$

$n$:受験者数、$x_{ij}$:生徒 $j$ の 設問 $i$ の得点

先ほどの例で確認

問1の識別係数を計算するとき、各生徒の「補正済み合計点」は 合計点から問1の得点を引いた値になります。

佐藤さん:25 - 10 = 15、鈴木さん:24 - 8 = 16、田中さん:21 - 6 = 15、 高橋さん:20 - 5 = 15、中村さん:19 - 3 = 16、渡辺さん:17 - 1 = 16

問1の得点 [10, 8, 6, 5, 3, 1] と補正済み合計点 [15, 16, 15, 15, 16, 16] の 相関を計算します。 問1の得点には大きなばらつきがあり、合計点の順序と概ね一致するため、 正の識別係数が得られます。

判定基準

一括採点では、識別係数の値に応じて5段階の判定を表示します。

識別係数判定意味
0.4 以上良好受験者の実力差を適切に反映している
0.3 〜 0.4許容十分な識別力がある
0.2 〜 0.3要確認識別力がやや低い。出題内容の見直しを検討
0 〜 0.2低い識別力が不十分。問題の改善が望ましい
0 未満要検討実力と逆の関係。出題に問題がある可能性
データ数に関する注意

識別係数の計算には最低3人分のデータが必要です。 受験者が2人以下の場合や、全員が同じ点数の場合(分散が0)は 識別係数を計算できないため、「---」と表示されます。 また、受験者数が少ないと値が不安定になるため、 ある程度の人数がいる方が信頼性の高い分析ができます。

判定基準はあくまで目安です。 「低い」や「要検討」の設問があっても、 必ずしも出題が不適切とは限りません。 基礎的な知識を問う問題は全員が正解して当然ですし、 応用問題は正答率が極端に低くなることもあります。 識別係数は、出題を改善するための手がかりのひとつとして活用してください。

問題分析機能の使い方

問題分析の結果は、2つの方法で確認できます。

Excelの「問題分析」シート

採点結果をExcel出力すると、「問題分析」シートが自動的に追加されます。 設問ごとに以下の情報が一覧で表示されます。

  • 配点 — 設問の満点
  • 正答率 — 満点を取った生徒の割合(%)
  • 得点率 — 平均得点の満点に対する割合(%)
  • 識別係数 — 補正済み項目合計相関の値
  • 判定 — 識別係数に基づく5段階の評価(色分け表示)

判定セルは色分けされているため、 識別力の低い設問をひと目で見つけることができます。 シートの最下行には各指標の平均値も表示されます。

出力プレビューの「問題分析」タブ

Excelを出力する前に、出力画面のプレビューで問題分析の結果を確認できます。 「問題分析」タブを選択すると、Excelシートと同じ内容がプレビュー表示されます。 Excelファイルを開かずにすぐ結果を確認したいときに便利です。

正答率と得点率の違い

正答率は「満点を取った生徒の割合」、 得点率は「平均得点 ÷ 配点」です。 たとえば10点満点の設問で、5人中3人が10点、2人が0点なら、 正答率は60%、得点率も60%です。 一方、5人中3人が10点、2人が5点なら、 正答率は60%ですが、得点率は80%になります。 部分点がある設問では両者に差が出ます。

識別係数は、テストの問題を振り返るための客観的な指標です。 次のテストに向けて、どの設問を改善すべきかの手がかりになります。 ただし、あくまで統計的な指標のひとつです。 問題の良し悪しは、出題の意図やテスト全体のバランスも含めて 総合的に判断してください。

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