開発ブログ一覧に戻る
しくみ解説2026年2月23日

テストを受けていない生徒の点数をどう扱うか — 欠測推定の仕組み

欠席でテストを受けられなかった生徒の成績はどうする? 0点にする? 他のテストから推定する? 一括採点が提供する4つの方法と、その仕組みを解説します。

欠測とは何か

テストを実施したとき、すべての生徒が受験できるとは限りません。 欠席、早退、転入などの理由で、テストを受けていない生徒がいることがあります。 この「テストを受けていないためにデータがない状態」を欠測と呼びます。

たとえば、中間テストと期末テストの2回で成績をつけたいのに、 期末テストの日に休んでしまった生徒がいる。 中間テストの結果から「期末も受けていたら、だいたいこのくらいだったのでは」 と見当をつける — それが欠測推定です。

具体例で考える

4つの推定方法の違いを理解するために、 ひとつの具体例を使って説明します。

ある理科のクラスで、成績をつけるために5つのデータソースを使います。

  • テスト1(100点満点)— 基礎的な内容のテスト
  • テスト2(100点満点)— 発展的な内容で、テスト1より難しいテスト
  • テスト3(100点満点)— テスト1と同程度の難易度のテスト
  • レポートA(100点満点)
  • レポートB(100点満点)

このクラスの7人の生徒のうち、山田さんだけがテスト2を欠席しました。 他の6人の成績は以下のとおりです。

生徒テスト1100点満点テスト2100点満点テスト3100点満点レポートA100点満点レポートB100点満点
佐藤さん8070708070
鈴木さん7060659080
田中さん6050557060
高橋さん9080806050
中村さん5040458090
渡辺さん4030357080
山田さん85753040

山田さんの成績を見ると、テストは得意(テスト1が85点、テスト3が75点)ですが、 レポートは苦手(レポートAが30点、レポートBが40点)です。 テスト2の欄だけが空欄になっています。

ここで表全体を眺めてみましょう。 テスト2はテスト1より難しく、どの生徒もテスト1より10点ほど低い点数を取っています。 たとえば、高橋さんはテスト1が90点でテスト2が80点、 佐藤さんはテスト1が80点でテスト2が70点です。 山田さんのテスト1は85点ですから、テスト2は75点前後が妥当でしょう。

この「75点前後」にたどり着けるかどうかが、推定方法の違いです。

4つの推定方法

方法1:推定しない

テスト2の欄を空欄のまま、成績計算に進む方法です。 テスト2は計算から除外され、 残りの4つ(テスト1・テスト3・レポートA・レポートB)だけで成績がつきます。

山田さんの場合

テスト2を除外し、残り4つの得点率の平均で評定します。

(85% + 75% + 30% + 40%)÷ 4 = 57.5%

この57.5%という得点率は、 後述する平均比率法(全ソース)の結果と同じになります。 平均比率法でテスト2を57.5点と推定して5つの平均を取っても、 (85% + 57.5% + 75% + 30% + 40%)÷ 5 = 57.5%で、 結果は変わりません。

ただし、テスト2を除外することで、データソースの配点比率が変わる点に注意が必要です。 本来は5つのソース(テスト3本 + レポート2本)で、 テストが全体の60%、レポートが40%のバランスでした。 テスト2を除外すると、テスト2本対レポート2本になり、50%ずつになります。

レポートが苦手な山田さんにとっては、 レポートの影響が大きくなる分、不利な計算になっています。

方法2:0点として扱う

テスト2を0点として成績計算に含める方法です。 「推定しない」ではテスト2が除外されますが、 「0点として扱う」ではテスト2が0点として計算に加わります。 欠席しただけで成績が大きく下がるため、 生徒にとっては厳しい結果になります。

方法3:平均比率法

山田さんが受けた他のテスト・レポートの得点率をもとに、 テスト2の点数を推定する方法です。

全ソースで推定した場合

まず、すべてのデータソースを参考にして推定してみます。

山田さんの場合

テスト1(85%)、テスト3(75%)、レポートA(30%)、レポートB(40%) の平均得点率は57.5%。

テスト2(100点満点)の推定値 = 100 × 57.5% = 57.5点

57.5点という推定値は、妥当な値(75点前後)よりかなり低くなりました。 レポートの得点率(30%、40%)が平均を大きく引き下げたためです。 山田さんはテストは得意なのに、レポートが苦手なせいで テストの点数まで低く見積もられてしまいました。

テストだけを参考にした場合

平均比率法では、推定に使うデータソースを選ぶことができます。 「テストの推定にはテストの結果だけを参考にする」 と設定してみましょう。

山田さんの場合

テスト1(85%)とテスト3(75%)の平均得点率は80%。

テスト2(100点満点)の推定値 = 100 × 80% = 80点

レポートを除外したことで、57.5点から80点に大きく改善しました。 テストの実力に基づいた推定になっています。

ただし、80点はまだ少し高めです。 テスト2はテスト1より難しいテストですが、 平均比率法は「テスト1で85%取れたなら、テスト2でも80%取れるだろう」 と、テスト間の難易度差を考慮せずに推定するためです。

「推定しない」との違い

「推定しない」も受けたデータの得点率で評定を出すため、 結果は平均比率法(全ソース)と同じになります。 平均比率法の利点は2つあります。 ひとつは、参考にするデータソースを選んでより適切な推定ができること。 もうひとつは、テスト2の点数を推定して埋めることで、 本来の配点比率(テスト60%:レポート40%)を維持できることです。

方法4:重回帰法(最も正確な推定)

4つの方法の中で、最も正確に欠測点数を推定できるのが重回帰法です。 平均比率法が山田さん自身のデータだけを使うのに対し、 重回帰法はクラス全員のデータを活用します。

もう一度、クラスの成績表を見てみましょう。 テスト1とテスト2の点数を比べると、はっきりした傾向があります。

  • 高橋さん:テスト1が90点 → テスト2は80点
  • 佐藤さん:テスト1が80点 → テスト2は70点
  • 鈴木さん:テスト1が70点 → テスト2は60点
  • 田中さん:テスト1が60点 → テスト2は50点
  • 中村さん:テスト1が50点 → テスト2は40点
  • 渡辺さん:テスト1が40点 → テスト2は30点

テスト2の点数は、テスト1の点数からちょうど10点引いた値になっています。 テスト2はテスト1より難しく、全員が同じくらい点数を落としているのです。 一方、レポートの点数はテスト2の点数とはあまり関係がありません。

重回帰法は、この傾向をクラス全体のデータから自動的に読み取ります。 「テスト2はテスト1から10点くらい下がる」「レポートは関係ない」 ということをデータから学習し、 山田さんのテスト1が85点であることから、 テスト2を75点と推定します。

なぜ正確なのか

平均比率法は「山田さんは普段80%取れるから、テスト2も80点だろう」と推定します。 重回帰法は「テスト2はテスト1より10点低くなる傾向がある。 山田さんのテスト1は85点だから、テスト2は75点だろう」と推定します。 テストの難易度差をクラス全体のデータから反映できるのが、重回帰法の強みです。

4つの方法の比較

山田さんのテスト2(妥当な値は75点前後)に対する、 各方法の推定結果をまとめます。

方法テスト2の扱い特徴
推定しない除外配点比率が変わる(テスト60%→50%)
0点0点厳しすぎる評価になる
平均比率法全ソース57.5点レポートの低い得点率に引きずられて低すぎる
平均比率法テストのみ80点改善したが、テスト間の難易度差を反映できない
重回帰法75点テストの難易度差を反映した最も妥当な推定
データ数に関する注意

重回帰法は、テスト間の傾向を読み取るために十分な人数のデータが必要です。 生徒数が少なすぎる場合は正確な分析ができないため、 自動的に平均比率法に切り替わります。 先生が手動で切り替える必要はありません。

推定値の調整

推定された点数に対して、さらに調整をかけることができます。 「推定値をそのまま使うのではなく、少し厳しめにしたい」 といった場合に使います。

乗率(かけ算)

推定値に一定の倍率をかけます。 たとえば、乗率を0.8に設定すると、推定値の80%が最終的な点数になります。 山田さんの例では、重回帰法の推定値75点に0.8をかけて60点になります。 「テストを受けていないので、少し差し引く」という考え方です。

加減点(足し引き)

推定値に一定の点数を足したり引いたりします。 たとえば、加減点を-5に設定すると、推定値から5点引いた値が最終的な点数になります。 山田さんの例では、75点から5点引いて70点になります。

自動補正

乗率や加減点を適用した結果、0点を下回ったり満点を超えたりする場合は、 自動的に0点〜満点の範囲内に収まるよう調整されます。

推定値の透明性

推定された点数は、画面上で「推定」と明示されます。 実際にテストを受けて得た点数と、推定によって算出された点数が 明確に区別されるため、先生が確認しやすくなっています。

推定結果に違和感がある場合は、推定方法や調整パラメータ(乗率・加減点)を 変更して再計算できます。 また、最終的な評定(A, B, Cなど)は手動で上書きできるため、 推定値をもとに算出された評定を先生の判断で修正することも可能です。

  • 推定された点数には「推定」のマークが付く
  • 推定方法や乗率・加減点を変えて再計算できる
  • 最終的な評定ラベルは手動で上書きできる

欠測の扱いは、成績の公平性に関わる重要な問題です。 一括採点は複数の推定方法を用意していますが、 最終的な判断は先生にお任せしています。 推定値はあくまで参考であり、先生の判断で自由に調整できます。

関連記事

一括採点を使ってみませんか?

最新版をダウンロードして、採点作業を効率化しましょう。

最新版をダウンロード

一括採点

中学校の先生が、全国の先生のために作った、採点ツール。

© 2023-2026 KeppyNaushika. AGPLv3 オープンソースソフトウェアとして開発しています。